電子ビーム 原理と応用
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近年のナノテクブームと到来により、電子ビームを応用した装置はますます注目を集めています。本サイトでは、電子ビームの基本原理からその応用技術まで解説しています。 キーワード解説へ
 電子ビームで見る
 ものが見えるとは?
 ものが見えるとは、光が「もの」にあたり、その反射光が人間の眼球を通って視覚情報として脳に伝わる一連の過程のことである。また、光には波長があるため、その波長の違いは「色」という情報をもつ。
 小さいもの見る場合に使われる道具として光学顕微鏡が思い浮かぶ。これはものからの反射光を光学レンズを使って拡大することで小さなものを見ることを可能にしている。
   光学顕微鏡の限界
 光には波長があり、可視領域の波長は約400〜800nmである。この長さより小さいものは見ることはできない。分かり易く、ボールと壁の問題として考えるとこういうことである。壁の凹凸を調べようとする時、その壁にボールを投げてその跳ね返り方を見れば凹凸の具合が分かる。ただし条件があり、ボールがその凹凸の形状よりも十分に小さくなければならない。凹凸の形状の方がずっと小さい場合、ボールはそのまま跳ね返ってくるだけである。ものと光の波長との関係もこれと同じである。小さなものを見るには光の代わりにもっと小さなボールを用意する必要がある。それが電子ビームである。電子などの一般に「粒子」と呼ばれるものにも波長はある(ド・ブロイ波長)。しかし、電子のド・ブロイ波長は光の波長に比べて極めて小さい。
 電子顕微鏡
 どのようにして電子ビームでものを見ることができるのか?まずは、二次電子検出型の電子顕微鏡の原理を説明しよう。電子ビームが照射されると、入射電子からエネルギーをもらって二次電子が表面から飛び出してくる。この二次電子をシンチレーターで検出することで物質表面の情報が得られる。物質表面の情報を2次元的に表現してやるには、電子ビームをスキャンしながら2次電子強度を測定してやれば、2次元的な二次電子強度分布(二次電子像)が得られる。このように電子ビームをスキャンしながら電子像を得る装置を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope: SEM)という。
 二次電子の代わりに反射されてくる入射電子(反射電子)を検出することでも物質表面の2次元像(反射電子像)は得られる。ただし、入射電子1個に対して反射電子は1個であるのに対し、二次電子は無数に飛び出してくるので、一般的に反射電子像よりも二次電子像のほうが鮮明な像となる。
 また、電子ビームのエネルギーが高く、観察試料が薄い場合、入射した電子ビームは試料を透過する。この透過した電子ビームを用いるのが透過型電子顕微鏡である。二次電子を使った走査型電子顕微鏡は試料表面の情報が得られるのに対し、透過型電子顕微鏡は試料内部の情報を得ることができる。
 電子ビームで描く
 観察と加工は同じこと
一般的な感覚で言えば、「ものを観察すること」と「ものを加工すること」は、全く別の行為に思えるだろう。しかし、微細加工の領域においては、これは殆ど同じ行為なのである。どういうことか説明しよう。
電子顕微鏡で観るとは、電子ビームを観察対象の表面に照射してそこから放出される二次電子を検出することであった。表面から二次電子を出すとはどういうことか?それは表面物質を構成する原子から電子が弾き飛ばされる、つまり、電子ビームによって表面物質に損傷を与えていることになる。
イオンビームであれば、表面原子を直接弾き飛ばして、まさに表面を「加工」することができるが、電子は原子に比べて質量が小さいため、電子ビームの場合は表面原子を直接弾き飛ばすわけには行かない。電子ビームの場合は、基盤の表面にレジストと呼ばれる感光物質を薄く塗布し、そこに電子ビームを照射する。そうすることにより、レジストを構成する分子の化学的特性が変わり、「現像」というプロセスを経ることで、電子ビームを照射した部分のみが削り取られたレジストのパターンが出来上がる。直接電子ビームで加工するわけではないので、「電子ビーム加工」とは言わずに「電子ビーム描画」と呼ぶのが一般的である。
 電子ビームは拡がる
電子線描画装置では、試料に照射する電子ビーム径は数nmレベルまで絞ることができる。では、そのサイズのパターンが描画できるかというとそう簡単ではない。質量の小さい電子は、レジスト内で分子に散乱されながら拡がっていく(前方散乱)。また、基盤表面付近で大きく散乱されて跳ね返ってきた(後方散乱)電子がレジスト内を走り回ることになる。また、基盤表面で生成される二次電子もレジストに影響を与える。その為、電子ビームで露光される領域は電子ビーム径よりも大きくなってしまう。
前方散乱の影響を減らすには電子ビームのエネルギーを上げることである。つまり、高加速電圧の電子線描画装置ほど、微細パターンを描画する能力をもっていると言える。しかしながら、高加速電圧にすれば良い事ばかりではない。レジスト内で電子が失うエネルギーは阻止能の式からも分かるように(lnE)/Eに比例する(Eは入射エネルギー)。つまり、エネルギーを上げるほど電子ビームがレジストに与えるエネルギー(=電子が失うエネルギー)は小さくなり、その結果、十分な露光量にするためにはより長い描画時間が必要となってしまう。
後方散乱電子や二次電子の影響を軽減するためには、原子番号の小さい原子で構成された基盤を使うのが効果的であるが、基盤としての平面度や強度を考えるとシリコン結晶、ガラスなどに限られる。その為、基盤とレジストの間に吸収層を入れ、後方散乱電子、二次電子の影響を軽減する研究も行われている。
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